キャリアコンサルティングとは?資格制度や相談の流れまで丸ごと解説

キャリアコンサルティングとは?資格制度や相談の流れまで丸ごと解説

更新日: 2025/12/17

はじめに

現代は「人生100年時代」といわれ、働き方の選択肢も広がっています。しかし、転職やキャリアアップなど、自分に合った方向性を見つけるのも容易ではありません。

そんな時に役立つのが「キャリアコンサルティング」です。キャリアコンサルティングは、専門家と対話しながら、自分の強みや価値観を整理し、納得のいくキャリア設計を描ける仕組みとして注目を集めています。

この記事では、キャリアコンサルティングの意味や相談の流れ、資格制度などを詳しく解説します。転職やキャリア形成に迷っている方はもちろん、資格取得を検討している方もぜひご覧ください。

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キャリアコンサルティングとは?

キャリアコンサルティングとは、働く人が自分らしいキャリアを築くために、専門家が職業選択・キャリア設計・能力開発などを支援するサービスです。

厚生労働省では、「労働者の職業選択や職業生活設計、能力開発に関する相談・助言・指導を行う専門的な支援」と定義されています。

参考記事:厚生労働省

相談の具体的な内容は、キャリアアップの目標設定、転職に関する悩み、ワークライフバランスの見直し、メンタルヘルスケアなど、職業生活全般にわたります。キャリアコンサルティングの専門家が、相談者の考えや状況を客観的な立場で整理し、実現に向けた具体的な行動への道筋をサポートします。

この支援を通じて、労働者は目指すキャリアの道筋を効果的に具体化できるほか、企業側も従業員の仕事に対する意識向上や人材の定着、組織の活性化を図ることができるというメリットがあります。

キャリアコンサルティングの流れ

キャリアコンサルティングは、段階的に進められます。

初回面談では課題を整理し、強みの棚卸しから行動計画の立案、フォローアップまで、一貫したサポートを受けられます。

1 事前ヒアリング

最初のステップでは、相談者の現状を丁寧に聞き取ります。仕事内容や職場環境、生活面の悩みを整理し、面談の目的を明確化します。

たとえば「転職を考えている」「今の仕事に不満がある」など、漠然とした悩みでも構いません。キャリアコンサルタントが質問を重ねることで、相談者の本質的な課題を見つけ、面談の方向性を共有します。

必要に応じて、キャリアシートや適性診断の結果も参考にします。

2 経験・スキルの棚卸し

次に、これまでの職務経歴や学習経験を振り返り、具体的なスキルや強みを洗い出します。成功体験や評価された業務をもとに、自分が得意とする分野を明確にします。

具体的にスキルの棚卸をすると、当たり前と思っていた日々の仕事の中に、他者から見ると価値のある能力に気づくことも多いです。この過程で、自分の市場価値を再認識できるため、キャリア転換の基礎を作る大切なステップとなります。

3 課題整理・目標設定

強みや興味の整理ができたら、次に「現状」と「理想のキャリア」とのギャップを明確に把握し、具体的な課題を設定します。

相談者が望むキャリアは、「専門スキルを習得し市場価値を高めたい」「仕事の負荷を調整してワークライフバランスを整えたい」「リーダーシップを発揮できるポジションに就きたい」など、人によってさまざまです。

キャリアコンサルタントは、相談者の価値観、ライフステージ、能力開発の意向などを深く掘り下げながら、実現可能かつ動機付けにつながる目標を一緒に設定します。これにより、「何を」「いつまでに」「どのように」達成するかという具体的な道筋を描けるようになります。

4 アクションプラン作成

目標が明確になったら、実現するための具体的な行動計画(アクションプラン)を作成します。これは、抽象的な目標を「いつ」「何を」「どのように」行うかという、実行可能で具体的なタスクに落とし込む作業です。

計画には、「転職活動の開始時期」「キャリアアップに必要な資格の取得」「上司へ異動や能力開発に関する相談」など、必要なステップを時系列で整理します。

キャリアコンサルタントは、これらの行動の優先順位や期限設定をサポートし、計画を“継続して行動に移せるレベル”まで具体化する役割を担います。

5 フォローアップ

アクションプランを実行した後、行われるのがフォローアップです。面談では、行動した結果を客観的に評価し、うまくいかなかった点や予期せぬ変化を再検討します。キャリアコンサルタントは、この振り返りの結果に基づき、計画を柔軟に修正・最適化するための助言を行います。

キャリア形成は、社会環境の変化や自身のライフステージの変化(結婚、育児、介護など)に応じて見直す必要がある、継続的なプロセスです。定期的なフォローアップを受けることで、設定したキャリアの方向性を常に最新の状況に合わせて最適化し続けることができます。

キャリアコンサルティングはどこで行う?

キャリアコンサルティングは、目的に応じてさまざまな場所で行います。

無料で気軽に相談できる機関から、専門性の高い民間サービスまで、多様な選択肢があります。

ハローワークでの無料相談

全国のハローワークでは、求職者や転職希望者を対象に、無料でキャリア相談を行っています。

国家資格を持つキャリアコンサルタントが在籍しており、履歴書の添削や面接練習など、実務的な支援も充実しています。費用をかけずに相談できる点が大きな魅力です。

民間サービスや専門機関での相談

転職エージェントやキャリア相談専門サービスなど、民間機関では有料での支援を提供しています。一人ひとりに合ったキャリア設計を重視し、丁寧なカウンセリングを行います。

オンライン相談にも対応しており、働きながら利用しやすい点が特徴です。

専門性が高く、転職やキャリアアップを目的とする人に向いています。

学校や大学の相談窓口

大学や専門学校のキャリアセンターでは、学生だけでなく卒業生のキャリア相談も行っています。就職活動の支援に加え、進路変更やスキルアップの相談も可能です。

専門スタッフが履歴書作成や面接対策をサポートしてくれるため、初めての就職活動にも最適です。

企業内で利用できるキャリア相談

企業では、従業員のキャリア形成を支援するための面談制度を設けるケースが増えています。

社内のキャリアコンサルタントや外部専門家が担当し、異動・昇進・スキルアップの相談を受け付けます。

特に近年、企業が戦略的に人材育成を行うために注目されているのが「セルフ・キャリアドック制度」です。企業が人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを体系的かつ定期的に実施する方針です。この制度を導入することで、従業員は自身のキャリアを棚卸し、長期的な成長と能力開発を促進できます。

参考記事:厚生労働省

キャリアコンサルティングを受けるメリット

働く個人がキャリアコンサルティングを受けることは、漠然とした悩みや不安を解消し、理想とする未来を実現するための一歩となります。

キャリアコンサルタントを目指す方にとっても、相談者にどのような価値を提供できるのかを理解しておくことは、資格取得後の実践をイメージするうえで大切になります。

ここでは、キャリアコンサルタントとして相談者にどんなメリットを届けられるのかを見ていきましょう。

自分の強みや適性が見える

キャリアコンサルティングの根幹となるのが、過去の経験やスキルを体系的に見つめ直す「キャリアの棚卸し」です。「自分に何ができるのか」「どんな環境で能力を発揮できるのか」が明確になることで、今後のキャリア選択に確固たる自信が持てるようになります。

また、自己認識が深まることで、これまで意識していなかった長所や隠れたスキルを発見でき、仕事へのモチベーション向上を目指せるでしょう。

転職やキャリアの方向性が明確になる

自己理解を深め、将来の目標や希望を整理する過程を通じて、転職やキャリアチェンジにおける判断軸が明確になります。軸が定まることで、「自分に本当に合った働き方」を選べるようになり、キャリアに対する漠然とした焦りや不安を軽減できます。

感情に流されることなく、目標達成に向けた道筋がはっきり見えるため、より戦略的かつ計画的に自身のキャリアを構築できるようになるでしょう。

第三者の視点で客観的にアドバイスをもらえる

キャリアコンサルタントは、相談者の職場や人間関係から完全に独立した専門家として、常に中立的かつ客観的な立場から助言を提供します。身近な人には話しづらいデリケートな悩みや、自分ひとりでは気づきにくい主観に偏った考え方も、安心して相談できます。

第三者による客観的なフィードバックを受けることで、頭の中の情報を整理し、現状を正確に把握できるようになるでしょう。

キャリアコンサルティングを導入するメリット

企業においてキャリアコンサルティングは、人材育成や定着率向上に直結する重要な仕組みです。キャリアコンサルタントを目指す方にとっても、企業側のメリットを理解しておくことは、資格取得後の実務イメージを掴むうえで役立ちます。

ここでは、企業がキャリアコンサルティングを導入することで得られる主なメリットを解説します。

従業員の定着率アップとモチベーション向上

従業員がキャリアコンサルティングを通じて自身のキャリアに主体的に関わるようになると、仕事への満足度が高まります。

モチベーションの向上で、漠然とした将来への不安が解消され、企業での長期的なキャリアに希望を持てるようになります。結果として、離職率の低下や優秀な人材の定着が目指せるのです。

生産性向上と適材適所の人材配置の実現

キャリア相談を通じて従業員の潜在的な強み、スキル、能力開発への意向を正確に把握することで、企業はより戦略的な人材配置や育成計画を立てることが可能です。

適材適所の人材配置をすることで、ミスマッチを未然に防ぎ、従業員が能力を最大限に発揮できる環境を生み出します。結果として、業務効率やチーム力の向上に貢献し、個人と組織の双方にとって最適な成果を生み出す高い環境づくりを加速できます。

メンタルヘルス対策と企業の社会的評価向上

定期的なキャリア面談を実施することは、従業員のストレスやメンタルヘルスの不調を早期に発見するための重要な機会となります。

安心してキャリアについて相談できる職場環境は、社員の心身の健康を支え、企業ブランドの向上にもつながります。「社員を大切にする企業」として社会的信頼を得ることは、優秀な人材を獲得するうえでも有利に働き、採用力強化というメリットもあるのです。

キャリアコンサルティングは資格が必要?

キャリアコンサルティングには、国家資格が関係します。

資格の有無によって活動の範囲が異なるため、ここで整理しておきましょう。

資格が必要な場合

「キャリアコンサルタント」を名乗って活動する場合は国家資格キャリアコンサルタントが必須です。

特に、企業のセルフ・キャリアドック制度など厚生労働省関連事業で支援を行う際は資格保持が求められます。資格を持つことで、専門性と信頼性を兼ね備えた支援が可能になります。

資格がなくてもできる場合

社員に対する日常的な面談や、上司による部下へのキャリアに関する一般的なアドバイスは、資格がなくても可能です。ただし、専門的な相談技法や倫理規定に基づき、体系的な知識をもって支援を「キャリアコンサルティング」として提供する場合は、国家資格が必要です。

資格を取得することで、倫理や相談技法を体系的に学び、実践的な支援を提供できるようになります。本格的なキャリアコンサルティングをおこないたい場合は資格取得がおすすめです。

資格制度がある理由

キャリアコンサルタントに国家資格制度が設けられている理由は、キャリア相談の「質」を一定水準で維持・保証するためです。

専門的知識の保証や倫理規範の遵守、守秘義務の徹底があることで利用者は「誰に相談しても一定レベル以上の支援を受けられる」という安心感を持ってキャリア相談ができます。

キャリアコンサルタントってどんな資格?

キャリアコンサルタントの資格について詳しく見ていきましょう。

国家資格「キャリアコンサルタント」とは

国家資格「キャリアコンサルタント」は、2016年に職業能力開発促進法に基づいて誕生した国家資格です。「キャリアコンサルタント」として活動するためには、国家資格取得が必須になります。

働く個人のキャリア形成を支援する専門家として、企業、教育機関、需給調整機関(ハローワークなど)、および個人を対象としたコンサルティングで幅広く活躍しています。

キャリアコンサルタントの概要は、「キャリアコンサルタントとは?仕事内容や活躍の場、資格取得方法を解説」の記事もぜひご覧ください。

仕事内容

キャリアコンサルタントの仕事は多岐にわたりますが、中心となるのは以下の支援です。

  • キャリア相談・設計支援: 相談者との面談を通じて、職業の選択、職業生活設計、能力開発に関する相談に応じ、助言・指導を行います。
  • 教育・育成: 必要に応じて、企業内での研修プログラムの実施や、人材開発への関与も行います。

さらに詳しく知りたい方は、「キャリアコンサルタントの仕事内容は?」の記事もぜひご覧ください。

キャリアコンサルタントを目指したい人へ

専門的なキャリア支援に携わり、国家資格を取得したい方に向けて、資格取得までの具体的なステップ、学習内容、試験概要を紹介します。

キャリアコンサルタントになるには

国家資格を取得するには、以下のいずれかの要件を満たし、国家試験に合格する必要があります。

  • 養成講習の修了: 厚生労働大臣が認定する養成講習の課程を修了した者。
  • 実務経験:一定の実務経験を有する者(経験年数などの条件あり)
  • 技能検定合格: 技能検定キャリアコンサルティングに合格した者。

多くの方は養成講座を通じて、キャリアに関する理論と実践的なスキルを体系的に学び、試験合格を目指します。

キャリアコンサルタント養成講座で学ぶ内容

養成講座では、知識習得に留まらず、実践力を高めるカリキュラムが組まれています。

  • 理論と実践:主要なキャリア理論、カウンセリング技法を学習し、ロールプレイなどを通して実践的なスキルを取得可能です。
  • 必須知識:倫理、法令、労働市場、職業能力開発に関する知識、心理学的知識などを体系的に習得し、実際の相談現場で活かせる総合的なスキルを身につけます。

さらに詳しく知りたい方は、「キャリアコンサルタント養成講座とは?費用相場と通学・通信講座について徹底解説」の記事もぜひご覧ください。

試験(学科・面接)の概要

国家試験は、知識を問う学科試験と、実践力を問う実技試験で構成されています。

試験種別 評価内容 特徴
学科試験 キャリア理論、職業情報、関係法令など 知識の網羅性、理解度を測る選択式の試験です。
実技試験 面談ロールプレイ、口頭試問 相談者役への対応力、論理的な解説能力など、実践力を評価します。

さらに詳しく知りたい方は、「キャリアコンサルタント学科試験とは?難易度や学習方法まとめ」「キャリアコンサルタント実技試験とは?論述・面接試験の内容や難易度まとめ」の記事もぜひご覧ください。

試験の合格率

キャリアコンサルタント試験の合格率は、おおむね50%前後で推移しており、養成講座などで適切に準備と学習を行えば、十分に合格が目指せる水準です。

試験対策などについてさらに詳しく知りたい方は、「 【最新28回】キャリアコンサルタント試験の難易度・合格率は?」の記事もぜひご覧ください。

資格取得後の働き方

資格取得後は、専門職として多岐にわたるフィールドで活躍できます。

【組織内】企業の人事・人材開発部門、大学などのキャリアセンター、ハローワークなどの公共職業支援機関。

【独立】企業向けや個人向けのキャリア相談サービスを独立して展開する人も増加しており、働く個人のニーズが高まる現代において、専門職としての需要はますます高まっています。

まとめ

キャリアコンサルティングは、働く個人が自身の将来を主体的に考え、具体的な行動へとつなげるための重要な支援制度です。

資格を持つ専門家であるキャリアコンサルタントによる面談を通じて、自身の強みや適性、キャリアの方向性を深く整理し、目標達成に向けたアクションプランを作成できます。また、企業にとっても、従業員の人材定着や組織活性化を促す極めて有効な戦略的手段です。

もし、ご自身のキャリアに不安や迷いを感じたとき、あるいは企業の人材育成に課題を感じたときは、専門家に相談してみることから一歩を踏み出してみましょう。

また、国家資格キャリアコンサルタントの資格取得や制度の具体的な内容について、さらに詳しくお知りになりたい方は、キャリアコンサルタントnetを参考にしてください。

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